for little princess02


 なぎさの机をはさんで、二人は見つめ合ったまま動かない。その静かなムードの中、莉奈が
身を乗り出すようにして、志穂の耳に囁きを紡いだ。
「志穂……私とキスしよ」
 えっ?と志穂が莉奈を見返すも、すでに二人の顔の距離はみるみる近づきつつあった。志穂
の両肩が優しく掴まれて、反射的に身を反らそうとする行動を押さえ込まれた。
 …………。
 一瞬で二人の距離が消滅した。志穂が戸惑っている内に、二人の唇は固く契りを結んでい
た。
「!」
 思わず押しのけようと持ち上がった両手が、相手が莉奈であったために、宙で途方に暮れ
る。唇を奪われ続けながら、信じられないという気持ちで、志穂の心が激しく揺れた。
(なんで…なんでなんでなんでっ……!)
 志穂は感情を混乱させ、激しく顔をねじった。ようやく開放された唇で莉奈に問いただそうとし
た。
「莉奈ッ! なんでこんな……むぐぅっ……!?」
 言葉の最中で、また唇を吸われた。さっきよりも性急で乱暴な吸い方だった。今度は逃げら
れないように、片手で後頭部を掴まれて、固定された。
(やだっ! 私のファーストキスが……!)
 感情が混乱し続ける。大切なファーストキスを、一番の親友に強奪されるというショックに、志
穂の心にヒビが入ろうとしていた。全く力の入らない両手で、頭部を固定する莉奈の手を払おう
と、ゆらゆらと波に揺られる海草のように無意味な抵抗を試みる。
 莉奈のキスが石のように固い。志穂の呼吸すら奪ってしまうほどに、頑なに唇が重ねられ
る。
 腕による抵抗も、言葉による拒絶も奪われて、最後に志穂は閉じられた目蓋から涙を溢れさ
せた。莉奈ならば、きっとこの涙の意味が分かってくれると志穂は信じた。
 ボロボロと頬を伝いこぼれる涙が、莉奈の唇をかすめるように濡らした。そして、ゆっくりと莉
奈の唇が離れていく。
「ごめん志穂……やっぱ私とじゃイヤだよね」
 感情のままに「私のファーストキス返してっ!」と叫びそうになって、志穂は唇を噛んでその言
葉を封じた。そのまま嗚咽を抑えてその言葉を嚥下し、胸の内に飲み下してしまう。
(莉奈を……傷つけたくない……)
 志穂は静かに首を横に振った。うつむいた顔から、なぎさの机にポタポタと涙の雨が降った。
「私ね……莉奈のこと、心から大切な……親友で、だ…だから、キスくらい……べ、べつにどう
ってこと……」
 嗚咽で言葉を途切れさせながら、徐々に気持ちを落ち着かせていく。それと反比例して、胸
の鼓動が早鐘を打ち、ポディティブに思考が走り始める。
(……そうだよね。相手は莉奈だったわけだし。私だって彼氏いるわけじゃないし、どーせ、こ
の先彼氏できるかどうかも分かんないわけだし……。だったら、私の一番大切なファーストキス
あげる相手が、私にとって一番大事な莉奈だったなんて、むしろ最高なんじゃない?)
 まだファーストキスの感触が残っている唇に軽く手を当て、初々しい薄紅色を頬に広げる。心
の奥から湧き上がってくる嬉びに口元をにやけさせ、志穂が早口で言葉を続けた。
「莉奈ったらさ、めちゃくちゃ強引にキスしてくるんだもんっ。私ね私ね私ねっ、てっきり虫歯うつ
されちゃうんじゃないかって思って……もう、絶対ダメェェ〜ってカンジ?」
 涙をボロボロとこぼし続ける表情を上げ、いつも通りのとびっきりの笑顔を乗せて、明るく言
葉を締めくくった。
「えへへっ…、泣いちゃってごめんねー」
「志穂……、私こそごめんね。本当に、私っ……」
 語尾を震わせつつ言葉を詰まらせた莉奈の声に、志穂が明るく言葉を被せた。
「いーのいーのいーのっ。私はホントになんとも思っちゃいないから。だから、泣かないでよ…
莉奈……」
 涙でぼやける志穂の視界に、顔を背けて涙を流す莉奈の姿が映った。莉奈が耐え切れない
分の気持ちを嗚咽に変えて流し去るのを、志穂も自分の心を静めながら待ち続けた。
 やがて、莉奈の嗚咽が穏やかになったのを見計らって、志穂のほうから誘いの言葉をかけ
た。
「ねぇ、莉奈。もし、いいかげんな気持ちじゃないんだったら、虫歯……うつしてくれてもいいよ」
「虫歯なんか無いっててば……」
 瞼(まぶた)は眠るように落ちた。
 志穂と莉奈の唇が、今度は二人の意思で結ばれた。涙で濡れてしまった互いの唇は、しょっ
ぱく味付けされてしまっていて、二人は声に出さず苦笑した。
 唇の柔らかさと、微かに交し合う吐息。高鳴る胸の鼓動が、甘やかな響きを帯びる。
「莉奈……、ちゃんとしたキスって、すっごく気持ちいいね……」
「んっ……、志穂とだから……」
 呼吸の間も惜しんで、貪欲に唇をむさぼりあう。身長に分がある莉奈が、押さえ付けるように
志穂の唇をキスで組み伏せ、主導権を握った。一方的なキスが飽きることなく続いて、その息
苦しい調教に飼い馴らされた志穂が、瞼の裏の瞳を興奮で潤ませる。
(莉奈……もっといっぱい吸って……)
 激しさを増したキスに何度も唇を嬲られ、志穂の腰の奥で、淫らな焔が咲き始めた。チロチ
ロと陰部を舐めるように焼き焦がし、くすぐったい火照りで処女の部分を責め狂わそうとする。
(莉奈ぁぁ…莉奈ぁぁっ…)
 声はキスによって奪われている。今にも崩れそうな腰を机に突いた両腕で支えながら、快感
に酔った表情を泣きそうに歪めた。
(…ガ…ガマンできないの……なぎさの机よごれちゃうけど、もうガマンできないのッ!)
 ぐっしょりと濡れそぼっていた陰部が、机の角に擦り付けられる。莉奈のキスで唇を洗われな
がら、あさましく腰を揺すって、快楽に沸き立つ秘所をなぐさめ始めた。
(あっ……志穂ったら!!)
 腰を使う気配に気付き、莉奈がいきなりキスを解いた。夢を見ている途中で叩き起こされた
かのように、志穂が困惑した表情で目を開く。そんな彼女を、莉奈は眉宇を顰めて睨み、強い
語調でなじった。
「ちょっと志穂ッ……最ッ低! こんなに私が一生懸命キスしてあげてるのに、またなぎさの机
に欲情しちゃったってワケ!?」
「…えっ、違う……私はなぎさに欲情なんか……」
「へぇ〜っ、言い訳?」
 突き放すような言葉に、志穂が軽いショックを受ける。いつもなら頭に来て言い返すところだ
が、キスで気骨を溶かされてしまった今の彼女には無理だった。弱々しく言葉を呑み込んで黙
る志穂の姿に、莉奈の目にサディスティックな色が走った。
「浮気者にはお仕置きしなくちゃ…ね。……志穂、口あけて」
 何となく莉奈のやろうとしている事が分かる。志穂はゾクゾク…っと背筋に妖しい期待を立ち
昇らせながら、素直に口を開いた。そして、志穂の予想通り、莉奈がすぼめた口を近づけてき
た。わずかな間さえ待てず、舌が迎えに出た志穂の口の中へ、小さな気泡を無数に含んだ唾
液の塊が垂れ落ちていった。
「こぼさないで……全部飲んで」
 食い入るような視線を送ってくる莉奈の前で、志穂はゆっくりと喉を上下させて嚥下してみせ
た。莉奈の表情に、淫靡な嬉びが広がった。
「志穂、もっと欲しい?」
 迷うことなく志穂は頷く。
 つ…っと莉奈の細指が志穂のあごを滑り、上を向かせる。志穂が口を開ききる前に、さっそく
唾液の塊が落ちてきた。口内へ受け切れなかったそれは、志穂のあごを伝って、なぎさの机へ
と落ちていった。惜しげに溜息をこぼす志穂の口へ、すかさず次の唾液が垂れる。ねっとりとし
た無味の滴りを、舌触りで味わいながら飲み干し、志穂が歓喜の声を洩らした。
「……んはっ。莉奈ぁ、もっとお仕置きして……。莉奈のつば…もっとたくさん飲ませてぇ」
 はしたない言葉をこぼす親友に、ガバッと顔を覆い被せて、獣がエサに食らいつく勢いで口を
塞ぐ。待ちわびていた志穂の口の中に、莉奈は溜まっていた唾液を全て流し込んだ。
「ン゛ン…っ」
 むせそうになる志穂の口の中に莉奈の舌が差し込まれた。押し入ってきた舌が、志穂の口
から溢れそうな唾液溜まりをグチュグチュと乱暴にかき混ぜ、より淫らさの度合いを強める。莉
奈は小さくあごをしゃくって、唾液壺として口を提供していた志穂に、濃厚な情愛をミックスし終
えた唾液を飲む許可を与えた。
 スイッチが入ったように、ビクッ!と志穂の背筋を歓喜が駆け抜けた。口に溢れる莉奈の唾
液を、こぼさないように喉の奥へと流し込んでいく。キスで唇を重ね合わせるだけでなく、体内
でも、莉奈が分泌したものとひとつになれるのだと思うと、股間が感極まったように潤んでいっ
た。
(味なんかついてないのに……莉奈のつば…すっごく美味しい……)
 ごくり…と飲み終えたあとにも、口の中や喉の奥に、粘っこい唾液の感触が染み付いて離れ
ない。いつまでも残る官能的な後味に、志穂の陰部の火照りがゆるゆると限界を突破した。ま
だ処女膜の奥に女の嬉びを通したことのない少女が、燃ゆるような快楽に、未開発の膣を焼
かれて悶える。ビクッ!…ビクッ!と手の届かない部分で跳ねる疼きに耐え切れず、志穂は再
びなぎさの机の角へ、熱く滾った秘所を押し付けた。
 発情しながら腰を動かす志穂に、莉奈はそっと優しい眼差しを送った。必死で火照った秘所
を慰めようとしている彼女の姿を、莉奈も股間をしどけなく濡らしつつ、愛おしさを込めて見守っ
た。莉奈は、志穂のことが本当に心から大好きでたまらなく……ついイジメてみたくなってしま
う。
 法悦の表情で、小さく喘ぎを跳ねさせている志穂に向かって、莉奈が冷たい言葉をあびせ
た。
「ふ〜ん。そんなになぎさの机がいいの? ……結局、志穂は私よりなぎさを取るワケね」
「違う違う違うっ! 私は……私にはもう莉奈しかいないよッ!」
 志穂の必死な告白を、莉奈はワザと無視した。視線をあさっての方向に向け、さらりと何事も
ないように言葉を紡いだ。
「浮気ばっかする志穂なんて、もうしらない。これからはなぎさに相手してもらいなよ」
 小さくうめいて、志穂が腰の動きをとめた。切なく疼く腰をもぞもぞさせながら、莉奈に許しを
乞う。
「ごめん莉奈…、私もう二度と浮気なんてしないから……ちゃんと約束するから……、だからお
願い……私のこと見捨てないで……」
 すがりついてくる哀願の視線を、少し高い位置から見下ろしながら、莉奈は意地の悪い光を
両目に湛える。本心では、なぎさよりも自分を選ぶと言ってくれた志穂への愛情を昂ぶらせつ
つ、軽い嗜虐心を発露させた。
(ふふん、今度はどうしてあげよっか……)
 奸計を巡らし、面白い事を思いついた。
 志穂の見ている前で、莉奈が淫猥な蜜にまみれた股間を、なぎさの机の角へと宛がう。堅い
木の角が、いびつな純愛によって醸成された愛液を吸って、黒く変色していく。
「やだ…莉奈っ、自分だって浮気……!」
 非難がましい声を洩らした志穂を蚊帳の外に置いて、自分一人で愉しみに耽る。腰を前後に
揺すって机の角を突き、志穂とのキスで蕩けさせた陰部に硬い刺激を送る。
「んん゛ッ……今までずっとガマンしてたから……いいっ、すっごく感じちゃう……あ゛っ、気持ち
いいっ……」
 志穂のことなど気にも留めないフリをして、濡れた嬌声を何度も彼女の耳に届かせた。切な
い疼きを腰の奥に抱えた志穂は、その声に見事に釣られ、ふらふらと机の角に下半身を寄せ
ていった。
「莉奈……そんな声だされたら、私…ガマンできないよ。……ねえ、私も一緒にやっていいでし
ょ?」
「…うん、別にいいよ。志穂もやっちゃえば? 私との約束なんか破ってさ」
 志穂の動きが凍りついたのを見て、内心で笑みを浮かべた。何気ない表情を装いながら、平
然と追い討ちをかける。
「あれ? 志穂、どうしたの? しなくていいの?」
「だってだってだって……莉奈との約束、破れないもん……」
 止むことのない悦楽の疼きに、全身で一番敏感な部分をさいなまれつつ……志穂は小柄な
体をくねらせ、煩悶とした表情で半べそをかいた。莉奈が性欲を充足させながら腰を振る一方
で、志穂はおあずけをくらった犬のようにどうすることもできず、ただ哀れっぽい視線で羨まし
そうにそれを見てる他はなかった。
 淫欲の焔に性器を内側から炙られ、志穂の股間からダラダラといやらしい涎がこぼれる。そ
の状態で自慰を封じられ、苦悶しながら耐える彼女の姿を舐めるように観賞しつつ、莉奈は志
穂への劣情をどんどんと募らせていった。